漢方では、痛みそのものに対してよりも、痛みを引き起こす原因に対して治療をしていきます。気(エネルギー)と血(血液)が流れ、臓器と臓腑あるいは臓腑と器官、皮膚などをつないでいる流れ道を経絡(けいらく)といいます。このうち太い流れを経脈(けいみゃく)、末端の枝分かれした細い流れを絡脈(らくみゃく)と呼びます。経脈の流れが悪くなると痛みの症状が、絡脈の流れが悪くなるとしびれの症状があらわれると考えています。この痛みやしびれの症状を痺証(ひしょう)といいます。
<痺とは、つまって通じないという意味>
1.痛みの原因は?
①「不通則痛」
(通じざればすなわち痛む)
冷たい風にあたった(風邪)、冬の寒さや冷房(寒邪)、梅雨や雨の日で湿度が高い(湿邪)、など自然界の影響により、気血の流れが滞ると、痛み・しびれを起こします。風・寒・湿の邪気が体内に長くとどまると、症状の慢性化につながりますので、早めの対処が肝腎です。
②「不栄則痛」
(不栄ならば痛む)
加齢、疲労、病後などによる虚弱体質など気血不足によって、栄養が巡らず痛み・しびれを起こします。
2.対処
①「不通則痛」タイプ
●初期の痛み
風・寒・湿の邪気の侵入による痛み・しびれは、体内の邪気を早く追い払うことが肝腎です。
〈症状〉
軽い足腰の痛み・しびれ、関節のこわばりなど
〈食養生〉
体内の邪気を発散させる食材を
(しょうが・ねぎ・シナモン・はと麦など)
●慢性的な痛み
痛み・しびれを引き起こす風・寒・湿の邪気が体内に長く滞ると、さらに気血の流れが悪くなります。ますます痛み・しびれが強くなり、慢性的につながりますので注意しましょう。
〈症状〉
・風痺:突然の激しい痛み。痛い場所が動く。
・寒痺:同じ場所が針で刺すように痛い。冷えると痛み、温めると痛みが和らぐ。
・湿痺:雨天・梅雨時に痛む。しびれ感が強い。身体は重く、動かし難く感じる。
〈食養生〉
身体を温めて、気血の流れを良くする食材を
(紅花・サフラン・フェンネル・八角・山椒の実・らっきょう・よもぎなど)
②「不栄則痛」タイプ
体力を十分につけて体内の気血を養うことが基本です。また五臓の『肝』は筋(筋肉と骨についている腱、筋膜、じん帯など)を健やかに保つ、『腎』は骨の生育と深い関わりがあります。加齢や疲労などの原因で肝・腎の働きが低下すると、関節がスムーズに動かない、骨の老化、腰に負担がかかるなどといった不調につながります。日頃から肝・腎の機能を高めておくことが大切になります。
〈症状〉
慢性化した足腰の痛み・しびれ、歩きにくい、関節がスムーズに動かない、足腰がだるい、手足の冷えなど
〈食養生〉
体内の気血を養い、肝・腎を補う食材を
(黒豆・松の実・くるみ・ごま・大豆製品・手羽・鶏ガラ・豚足・テールスープなど)
3.暮らしの養生
①バランスのとれた食事で栄養をしっかり摂って、体力づくりを。
②ゆっくり、無理なく続けられる運動を心がけましょう。
③冷える、湿気の多い場所には気を付けて。
④毎日の入浴で、身体を芯から温め、血行を改善しましょう。
かぎや薬局
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