高齢者の方へのアンケートでは、最も避けたい病気のナンバーワンに挙げられている認知症。その認知症予防でもっとも大切なのは早期発見です。そして、脳の病変は40歳代から始まっているといわれていますので、日頃から気をつけることが大切です。
1.“加齢による物忘れ”と“認知症”とは違います!
加齢による物忘れとは、『きのうの夕食、何を食べたっけ?』というように、体験したことの一部のみを忘れることで、物忘れの自覚があります。認知症とは、『昨日の夕食、食べた?』というように、体験したこと自体の記憶消失。それだけでなく、脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障がでる状態をいいます。
2.認知症は、もっともなりたくない病気のナンバーワン
現在、認知症の根本治療薬はなく、一度発症すると元に戻すことが困難だからです。そして今後、高齢者の5人に1人が認知症になるのではないかといわれています。その発症の階段は、個人差がありますが、次のようになっています。
発症
→3年目頃:記憶力の低下(時、場所、人など)
→6年目頃:日常生活動作の障害(今までできていたことが出来なくなる)
→8年目頃:運動機能の障害(歩行や嚥下などが出来なくなる)
また、認知症の初期症状は、
①同じ事を何回も話す・尋ねる
②物の置き忘れが増え、よく捜し物をする
③以前はできた料理や買い物が手間取る
④お金の管理ができない
⑤ニュースなど周りの出来事に関心がない
⑥意欲がなく、趣味・活動をやめた
⑦怒りっぽくなった・疑い深くなった
当てはまる項目が多いほど、認知症の可能性が高いといわれています。
3.認知症のタイプは?
認知症のタイプは、大きくわけて4つあります。
①アルツハイマー型認知症
認知症全体の約6割。脳の老廃物・不要なたんぱく質「アミロイドβ」や「リン酸化タウ」の蓄積により、脳血管が傷つき、血流が悪化し、神経細胞の死滅が起こり、脳が委縮し発症します。脳の萎縮は、記憶をつかさどる海馬から始まり、脳全体へ。
②血管性認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症。脳卒中により、脳内の血流が妨げられると、その先の神経細胞が死滅し、脳がダメージを受けます。これにより、認知症が起こる人が一定数います。
③レビー小体型認知症
脳の神経細胞の内側に、「レビー小体」という変異たんぱく質の塊が多数発生し、神経細胞が死滅することによって起こる認知症です。体のこわばりとリアルな幻視が特徴。
④前頭側頭型認知症
全体の割合からすれば少数のタイプ。脳の前頭葉や側頭葉の前方を中心にして萎縮が起こる認知症です。
4.「最近、物忘れがふえてきた」と感じたら、早めの対策を!
認知症の前段階つまり軽度認知障害(軽微な認知機能の低下は認められるが、日常生活では自立した状態のこと)を放置してしまうと、認知症に移行します。移行率は、1年で12%・4年で50%・6年で80%といわれています。認知症予防は、早期発見。そして、早めの対策です。
①よく眠りましょう
脳内に蓄積するアミロイドβなどの老廃物は、睡眠中に排泄されますので、良質の睡眠をとりましょう。「寝る子は育つ」ならぬ、「寝るシニアはボケない」のです。
②有酸素運動をしましょう
有酸素運動で脳に血液を十分に送り込めば、栄養や酸素を脳細胞に運ぶ毛細血管の流れが良くなり、脳細胞が元気になります。
③生活習慣病を予防しましょう
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病があると、アルツハイマー型認知症が起こりやすいことが知られています。特に、糖尿病のある人ではリスクが2倍になるという研究結果が報告されています。
④脳を活性化しましょう
脳を活性化することで認知症を予防しましょう。趣味・仕事をもって社会参加する、よく笑う、新しいことを習得するなどは、脳の活性化に役立ちます。
⑤良い血流を維持しましょう
脳の血流が途絶えると、
・10秒で脳機能低下、意識低下
・数分で脳細胞の死
となってしまいますので、脳にとって血流はとても大切です。そして、脳で最も血流が多い場所・本能的な行動や記憶をつかさどる部位は、海馬です。アルツハイマー型認知症では、この海馬周辺から萎縮が始まります。常に、良い血流を維持していくことが、認知症の予防につながります。
かぎや薬局
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