夏の上手な過ごし方

漢方で夏バテ対策


1.夏バテは、本来「夏の暑さによって体力が低下したせいで、秋口に体調を崩すこと」を意味していました。

現在では、夏の暑さによる身体の不調を「夏バテ」と呼んでいます。

 

夏バテの症状は、

・疲れやすい・食欲不振・身体がだるい・夏カゼをひきやすい・身体がむくむ・下痢、軟便・睡眠不足・無気力など

 

 

2.夏バテの原因は?

漢方では、夏バテの原因は、日本の夏特有の暑邪(暑さ)と湿邪(湿気)が原因と考えます。また、冷房設備などの住環境の変化により、寒邪(夏の冷え)にも注意が必要になってきました。

 

①暑邪

●暑邪により身体に過剰な「熱」がこもる

暑さによって、身体に過剰な「熱」がこもり、イライラしやすい・怒りっぽいといった精神不調や、身体のほてりで十分な睡眠がとれず疲労感が残るなどの症状がでやすくなります。

●暑邪による潤い不足

暑さの影響で、多汗により身体の「体液(津液…身体に必要な水分、潤いのこと)」と「気(エネルギー)」を消耗しやすくなります。これにより、血液の濃度も高まり血液がドロドロの状態になり、血流をコントロールする「心」に大きな負担がかかり、動悸・息切れ・倦怠感などの症状がでやすくなります。また、身体の潤い不足により、皮膚の乾燥・便秘気味などの症状がでやすくなります。

 

②湿邪

暑い夏は、湿気や冷たい飲食物の摂り過ぎで、体内に「湿(余分な水分や汚れ)」が溜まりやすくなります。溜まった湿は、「脾胃(胃腸)」の働きを低下させ、食欲不振・むくみ・下痢・便秘などの症状がでやすくなります。また、栄養を十分に吸収することができないため、体力の消耗へとつながってしまいます。

 

③寒邪

暑い夏の過度な冷房は、身体の冷えを招きます。そして、冷房の効いた室内と暑い屋外を何度も出入りすることで、自律神経のバランスが乱れやすくなり、適切な体温調節ができなくなってしまいます。その結果、身体の冷えだけでなく、血行不良・全身の倦怠感・頭痛・肩こり・生理痛・食欲不振などの症状がでやすくなります。

 

 

3.対処

①暑邪

●「熱」を冷ます

日頃から身体の余分な熱を冷ますよう心がけること。涼性・苦味で身体の熱を冷ます食材(すいか・きゅうり・苦瓜・れんこん・トマト・緑豆・緑茶など)を取り入れていきましょう。

●「潤い」を養う

汗で消耗した潤いをしっかり補給すること。身体の体液が減少すると脱水状態になりやすく、その結果血液の粘度(ドロドロ度)が高まり、血栓ができやすくなります。そのため、夏に脳梗塞・心筋梗塞を起こしやすくなりますので、こまめな水分補給がとても大切になります。

また、栄養をしっかり取って気を養うことも心がけましょう。旬の夏野菜は潤いたっぷりなので、積極的に取り入れていきましょう。

 

②湿邪

「湿」を取り除くには、脾胃の働きを整えること。そして、脾胃は冷えに弱いので、温かい飲食を心がけてください。

特に、脾胃が弱い人・脾胃の調子が悪いときには、

  • 生野菜も脾胃を冷やすので、温野菜にしたり、摂り過ぎないようにする。
  • 寒涼性の刺身や冷や奴を食べるときには、しょうが、紫蘇、みょうがなど、湿を取り除き、脾胃を健やかにする薬味をプラスする。

など、心がけてください。

 

③寒邪

夏の冷えを予防し、改善するには、

  • 冷たい飲食物を摂り過ぎないように。
  • 適度な運動をして、新陳代謝の良い身体づくりを心がけましょう。
  • 服装…冷房が効いている場所では、上着やひざ掛けなどで身体を冷やさないように。また、冷えは足から入りやすいので、素足でなく、 靴下をはくように。
  • シャワーでなく、38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり(10分間くらい)つかる。(熱めのお湯だと、交感神経が刺激されて緊張状態を強めてしまいます)
  • 冷房の温度設定は、室内外の温度差を、5℃以内にする。

夏の冷えで、血行が回復しないまま秋になると、強い冷えに悩まされることもあるので、注意してください。

 

 

4.暮らしの養生

1日3食摂るようにしましょう。

身体に必要な水分量の約40%が食事由来といわれています。そのため、飲み物だけでなく食事からの水分補給は、欠かせないものになります。

また、暑さのためさっぱりした献立(冷や奴、冷たい麺類など)になりがち。たんぱく質やビタミンが不足して体力、代謝が低下し疲れが溜まりやすくなってしまいます。バランスの良い食事で、夏バテしない身体づくりをしていきましょう。

②夜更かしせず、朝型の生活をしましょう。

③夏バテによる体内の消耗や体調不良は、涼しくなった秋ごろまで続いてしまうので、しっかり予防・対処することが大切です。